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2010.06.14
■ その想い、伝わっていますか? 第2回 「伝えたいのは、言葉じゃない」 横林 英勲
最近のコミュニケーションは、ツールの選択肢が増え、本当に伝えたいことがツールの選択ミスなどで埋もれてしまったりしている、と前回書いた。では、そもそもコミュニケーションはツールがなければ成り立たないのだろうか。実はそうではない気がする。
例えば、言葉というツールについて考えてみよう。
営業をしていると「前向きに検討します」という言葉をよく耳にする。言葉だけを考えると、一見良い状況にも思えるが、実際には断る際の常とう句だったりする。
では、「早めにお願いします」はどうか。「早め」は相対的で、どの程度か分からない。人によっては1日でも遅いと感じる人もいれば、1週間でもいい人もいる。「早め」という言葉の示す早さが人によって異なることを忘れ、失敗してしまうことは、誰もが経験したことがあるはず。
コミュニケーションは、(特にビジネスでは)相手が何を伝えようとしているのかを理解し、それを踏まえて自分がどう動くかがクリアになって、はじめて成立したといえる。
では、同じ状況でも、なぜ伝わったり、伝わらなかったりすることがあるのか。
まず、伝わらない場合のひとつに、単純に言葉の意味が通じていないことがある。自分が日本語で一生懸命伝えても、日本語が分からない相手では、ほとんど伝わらない。日本国内でも方言があり、現地の人しか分からない言葉や訛りもある。
しかし、ただ単純に言葉が分からないのはまだマシだ。実は、分かったように見えて言葉の意味を間違えている場合の方が厄介で、日常にはそういった危険があふれている。
この場合、その場ではお互いに「了解」ということでコミュニケーションが終了する。しかし、後で確認してみると全く違う認識になっていたりするのだ。コミュニケーションでは、言葉という記号を音や活字、映像(手話など)に乗せて伝達する。しかし、相手がその言葉の意味を知らなかったり、意味の取り方を間違えていると、一見コミュニケーションがうまくいったように思えても、伝わっていない。こればかりは、相手の知識力・理解力など、相手に委ねる部分も大きい。
ただ、もちろんすべてが相手任せというわけでもない。例えば発信者は、伝えるために、相手が分かる言葉に変換して話したり、都度伝えたいことと伝わっていることがズレていないかを確認しながら話したりする。そういう気遣い、心遣いで、言葉や話し方を工夫することで、よりズレが減る。相手の環境や立場、状況を踏まえて言葉を選んでいくことが、「伝えたいことが伝わる」コミュニケーションへ近づく道なのである。
さて、一方で「言葉は分からなかったけど、身振り手振りで通じたよ」とか、「カタコトでもなんとかなったよ」なんてことを、海外旅行に行った人から聞いたり、自分自身で体験したことが誰しもあるのではないか。
「会う」「電話」「FAX」「メール」「手紙」などのコミュニケーションツールの選択を間違えないことも重要だが、ツールの選択を間違えても、伝えたい気持ちや内容さえしっかりと自分自身で持っていれば、伝わることもあるのだ。逆にツールの選択が適切であってもその気持ちを持っていなければ、それはきっと伝わらない。
「会いたい」というメールがくれば、安心することもあるが、それはそもそもそのメールを送ってくれた人の「会いたい」という気持ちを、会っているときや電話などの声に感じたことがあるから、伝わるのであり、メールの文字にその力があるわけではない。伝えたいことを別の形で共有したことがあるから、伝わるのではないか。もし、会ったことのない人や親しくない人から、同じ内容のメールをもらったら、同じ気持ちにはなれないだろう。
言葉は、経験や環境、状況によって人それぞれ意味が違うものである。コミュニケーションは、気持ちを伝える。伝えたいからこそ、相手を知ろうとする努力が生まれる。だから、私たちは相手の雰囲気がダイレクトに感じられる直接会うという手段をとったりする。そして空間を共有すると、相手に合った言葉選びが一層しやすくなる。その人の経験や環境、状況を知ろうとしたうえで言葉を選ぶことは、円滑なコミュニケーションを図るための重要な手段。そして、伝えたいという想いは、時に言葉よりも大事だ。


